人への投資を考える-2 投資が仇となる場合も実は多い

前記事から続き。

おおよそプロの選手に対するコーチングは「自己の成長を促すマネジメント」でなければならない。才能があり、すでにそれが認めれているわけである。

多くの「育成失敗」などと言われるケースは、本人の努力不足を除けばこの「マネジメント」「コーチング」という言葉を切り分けなかったことによるものだろう。

求められているマネジメントは「本人の成長を促す」ものであるのに、「自分の体験を伝える」マネジメントをすることで、本人がもともと持っていた才能や成長を頭打ちにしてしまう。さらに多くの人が関わってこのマネジメントを行うことで、次々に伸びるべき要素が消されてしまい、何物でもなくなってしまうのである。

本人の成功体験はその要素に徹底的にフォーカスすることで生じたケースや、そのマネージャー(コーチ)特有のものである場合が多い。特にプロの選手であれば血のにじむ努力によってその要素を伸ばした結果で成功を得られたという人が多いだろう。

つまり、構造的にプロの選手に対しての、「体験を伝えるマネジメント」は失敗するのだ。一時的にコツをつかませることや、明らかに下手な要素を直すという際には効果的だが、それ以上に強度を上げてこのマネジメントはもはや禁止と言っていいレベルではないだろうか。

会社で考えた場合に、「体験を伝えるマネジメント」しかできないマネージャーを一定以上置くことは極めて危険だ。前の記事で述べたように、「本人の成長を促す」というフェイズがなければ、メンバーがそのマネージャーを超えることはない。最もうまくいって同等、つまり100%の確率でそのマネージャー以下(>=)の人材が出来上がる。

これを繰り返すことで当然に全体のレベルが徐々にもしくは急激に下がっていく。一度下がれば上げることはできない。

早急に組織を解体するか、「本人の成長を促す」マネージャーを配置しなければならない。

つまり、いかに「本人の成長を促すマネージャー」という存在が組織の成長、会社の価値向上に必要であるかということがいえる。

自分の体験を適切に伝えるというのはフェイズ上重要だが、これは新人など一定のレベルに早期に鍛え上げる際のみに使うべきで、そのフェイズを過ぎたらすぐさまマネジメントラインから外さなければならない。本人の成長にブレーキをかけるのである。

初期の立ち上げフェイズに強いマネジメント、その後のマネジメントは完璧に分けるべきだ。両方ができるマネージャーがいれば、その人材は得難く、手放すべきではない。

どちらか一方しかできないのであれば、多くの場合は後者の「本人の成長を促すマネージャー」を残すべきだ。(ケインズの時代のように、使い捨てていくことを目的する場合のみ前者だ)

特にその分野においてプレイング経験のないものや浅いものをマネジメント層として設置する場合、期待する役割をさらに厳密に設定する必要がある。

従業員を効率的に働かせることで労働力の吸い上げを上手に実施できるマネージャーもいるが、その場合は同じ分野での経験があった方がいいだろうと私は思う。つまり、効率的な働き方を従業員に求める場合の多くはそれほど高い技能を要求しない場合など習熟度の低いレベルにおいて実施されることが多い。

体験を伝えられない場合、手法としては「効率的な配置やシステムを整える」もしくは「分野に限らない部分で本人の成長を促すことができる」というように大別できる。前者は何度か述べているような厳密にいうと人への投資ではないパターン、システムの一部に「人間」が組み込まれているパターンとなる。

効率的な労働力の吸い上げにおいて重要なことは、従業員をその場にとどまらせるということも含まれる。この際に起こることは従業員の成長を促し過ぎることで離職や給与の上昇が起こるということだ。だからこそ、閾値を超えない範囲で労働力を最大化することが求められる。しかも、現代においてはマネジメント対象メンバーを搾取しない状態、彼らは満足している状態で、ということだ。

少し話が逸れるが、この状況で事業を高度化(利益率を高くすること)するためには秀逸なマニュアル化、業務の切り分けが必要である。ここにもまた別のプロフェッショナルが求められることとなる。この人物も非常に重要だ。利潤のシステムを切り分けることで平易なものに変換する能力は企業にとって利益を上げる重要なファクターになる。

かなり話が広がってしまったが、マネジメントの設置は人への投資ということだ。ただしそれは初期段階で「体験を伝える」タイプのマネジメントを実施し、習熟してきたタイミングで直ちに、「本人の成長を促す」タイプのマネジメントを実施できるという状態であることが望ましい。

本人の成長を促すためには、「本人による思考・アウトプット」が必須の条件となり、本人による思考・アウトプットの前提条件に、仕事の知識やスキルが必要となる。

この時、大きなジレンマが生じる。本人による思考やアウトプットによる成長が成功していったとしても、本人がその会社にとどまりたいと思い続ける会社や業務である必要がある。

この点に、自社そのもの魅力やサービスの適切な価値を見極め、不足しているのであれば作ること。もしくは、上記のような人への投資ができる会社なのかどうかを本当に考える必要がある。

人への投資によって、社員の価値が上がり続けたときに、会社そのものの魅力も上がり続けることをしなければ育った社員が抜け続けるということが生じる。

育ったと思ったら抜ける、という会社は複合的に「育った後に残るだけの魅力が足りない」のだ。

この場合は、会社の魅力を高めるか・育てる方向を改めるかしかない。

また長くなったので次に続く。

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